ディア・マイ・サンタクロース

クリスマス (2013年)

ごろりと身体をベッドに転がして、テレビのリモコンへと手を伸ばす。
代わり映えせえへんバラエティと、いかにもクリスマスっぽい曲を流す音楽番組。今日はめぼしいニュースもなくて、電源を入れたのも束の間、すぐにまた、テレビはただの黒いボードに戻る。 静まり返った部屋の隅には、一昨日和葉が忘れた、というか、たぶん置いて帰った雑誌が広げられたままになっとった。
ジーンズのポケットに入れた携帯電話に手を伸ばす。

「何やねんアイツ……まだ怒ってるんか」

携帯電話買うてもろたばかりの高校生か。
そんなツッコミを入れたくなるほどの頻度で着信お知らせランプをチェックしとる自分が、ほんまにアホらしく思えてくる。

1通目のメールを送ったのが1時間前。
2通目のメールを送ったのが30分前。

それでも全く反応のないことに焦れて電話してみたのが10分前やった。
せやけど、返ってきたのは無機質なコール音だけ。
留守番電話にすら切り替わらず、結局、そのまま切るしかなかった。

「行ってみるか……」

口から勝手に出てきた呟きに、慌てて首を横に振る。
何でオレがアイツのためにそこまでしてやらなアカンねん。 確かに、この間のオレの態度は悪かったとは思うけど、せやけどそれはそもそも、アイツがあんなにイロイロ見せるから……

鮮明に目に焼き付いてしもた、薄いピンクのレースと、それに包まれた真っ白な二つと、その間にくっきりと入ったライン。

絶対、夏に海で見た時よりでかなってる気がする……

そのまま聖なる夜の前夜には似つかわしくない妄想に入ってしまいそうになったオレの意識は、枕を伝って届いた振動音によって引き戻された。
慌てて起き上がって、枕の上の携帯電話を掴む。

「ようやく折れたか。アイツ意地っぱりやから……って、ん?」

つい、舌打ちしてしもた。
送信者欄にあるのは、期待しとった名前ではなく、つい1時間ほど前に別れたばかりのクラスメート兼部活仲間のそれ。

「ええ子にしとったおかげか、サンタさんが来てくれましたぁ? ……何やこのメール」

ええ子にしとったおかげか、
サンタさんが来てくれました。
服部君のところには、来ましたか?
たぶん来てくれはらないと思うので、
僕のところに来てくれたサンタさんを
おすそわけです。

 

わけわからん文面を適当にスクロールして読み飛ばしとると、添付の画像があるのに気付いた。特に深く考えずに、クリップのアイコンをクリックしてみる。

「なんじゃ……これ!?」

慌てて画面を切り替えて、アドレス帳からメールの送信主の名前を探す。発信ボタンを押すと、数回のコール音のあとで留守番電話に切り替わった。

くそっ。コイツわざとやな……

ダウン片手に部屋を飛び出した。

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